割増賃金の請求は、具体的な金額等を明示しなくても、時効中断の催告と認められるのか?

割増賃金を算定する書類等は会社側が保有しており、催告に当たって具体的な金額及び内訳の明示を要求するのは酷に過ぎ、請求者・債権の種類・支払期を特定すれば足りるとされた事例
(平成11.7.14 長野地裁佐久支部判決 NSシステム事件)
判決の要点
催告の内容(権利明示の程度)
1.原告らは、被告会社に対し、平成5年6月4日到達の書面により、原告らの住所・氏名を明示した上で、賃金台帳・タイムカード・勤務表に基づいて、平成2年4月以降分の時間外及び深夜の割増賃金を計算して支払うよう請求したが、この請求においては、原告らの債権額及び内容は明示されていない。
2.ところで、時間外手当及び深夜手当は、賃金台帳・タイムカード、現実の勤務を記載した警備勤務表に基づいて、就業規則に基づく賃金規定に定められた複雑な計算方法により算定すべきものであるが、これらの書類は被告会社が所持し、原告らは被告会社から交付された各月の給料明細書を所持していたにすぎないから、原告らが容易に算定できないことは明らかである。
このような場合、消滅時効中断の催告としては、具体的な金額及びその内訳について明示することまで要求するのは酷に過ぎ、請求者を明示し、債権の種類と支払期を特定して請求すれば、時効中断のための催告としては十分であると解されるから、原告らの前記請求は時効中断の催告としての効力があるものというべきである。