賞与の対象期間の一部を勤務していれば、幾分かの賞与請求権が認められるのか?

賞与対象期間の全部を勤務せず、支給日に不在籍であっても、別異に解すべき就業規則等がない限り、対象期間内の労務に対する報酬として受給権を有するとされた事例
(昭和53.3.22 東京地裁判決 B計算機事件)
判決の要点
賞与に関する慣行及び当該賞与の賃金性の認定
被告会社においては、経営状態が著しく劣悪で賞与の支給により事業の維持経営が危うくなるなど、特段の事由のない限り、毎年6月及び12月に従業員全員に賞与を支給する慣行になっていたものと解するのが相当であり、この賞与中に収益配分的、功労報償的性格を有する部分の存することは否定できないが、生活給的な性格を有する部分も決して少なくない。
これら諸事情を勘案すると、被告会社における賞与は少なくとも被告会社が単に恩恵又は任意に支給するものではなく、従業員が対象期間内に提供した労務に対する賃金の一種として支払われてきたものと認めるのが相当である。
対象期間の全部を勤務せず、支給日に不在籍な場合の請求権の存否
1.本件賞与の性格が上述のようなものであるとすると、これを別異に解すべき就業規則等の規定あるいは確立した慣行が存在しない限り、従業員は支給対象期間の全部を勤務しなくても、また、その支給日に従業員の身分を失っていたとしても、原則として支給対象期間中勤務した期間の割合に応じて賞与の支給を受けるものと解するのが相当である。
2.したがって、被告会社の取扱いのように、被告会社が一方的に賞与の支給日を指定し、支給日に在籍する者のみを支給対象者と定めて、その者のみに賞与を支給することは、支給対象期間の全部又は一部を勤務し、かつ、支給日に在籍しない従業員の権利を奪うことになるから、前記のように特別の社内規定又は社内慣行の存しない限り許されないこととなる。
しかしながら、被告会社には、その取扱いの根拠となる社内規定は存しない。
3.そして、被告会社の取扱いが慣行と認められない限り、被告会社は原告に対し、その勤務成績及び勤務期間に応じた賞与を支給すべき義務を有するものといわなければならないが、当該取扱いが社内慣行として確立していることを認めるに足りる証拠はない。
したがって、支給日に在籍しないことを理由として昭和51年度冬季賞与の支給対象期間のうち、5ヶ月を勤務した原告に賞与を支給しないことは不当であり、許されないものである。
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